シェンゲン協定とシェンゲンビザ
ETIAS施行の背景にあるシェンゲン協定やシェンゲンビザについて
2021年、欧州のシェンゲン協定加盟国内において、ETIAS(European Travel Information and Authorization Systems)、欧州渡航情報認証システムが施行されます。
これは、シェンゲンビザ免除の国籍保持者が対象で、渡航者の生年月日やパスポート、現住所等の情報を予めオンライン上で登録・申請し、シェンゲン協定の諸機関から渡航許可の承認を得てシェンゲン圏に渡航する、というシステムです。
この電子渡航認証システムは、アメリカのESTAやカナダのeTA、オーストラリアのETAS等で既に採用されています。
このETIASは、シェンゲン協定加盟国と、その協定国で必要なシェンゲン査証(ビザ)の効力を元に作られていますが、当ページでは、それらに関するシェンゲン協定・シェンゲン査証(ビザ)について簡単に解説しています。
シェンゲン協定とは?
まず、シェンゲン協定とは、1951年にドイツやフランスなどの特定の加盟国間の出入国審査を簡略化した協定の事を指します。
これによって、シェンゲン協定加盟国におけるビザやパスポートといった旅券・税関の審査を簡略化し、加盟国間での人の移動の自由が担保されるようになりました。
例えばシェンゲン加盟国であるポーランドのワルシャワへ空路で到着し、そこでの入国審査で入国が仮に認められれば、同じシェンゲン加盟国であるドイツやオランダ、果てはポルトガルまで国境審査を受けることなく移動できます。
つまり、いったんシェンゲン協定の加盟国に入国すれば、加盟国間での国境審査などの面倒な手続きをショートカット出来るので、ヨーロッパへの観光・ビジネス目的での周遊・渡航をスムーズに行うことが可能です。
シェンゲン協定に加盟している国々
シェンゲン協定に加盟している国は、2019年6月現在で以下の26カ国の国々で構成されています。

- アイスランド
- ノルウェー
- スウェーデン
- フィンランド
- エストニア
- ラトビア共和国
- リトアニア
- ポーランド共和国
- ドイツ
- デンマーク
- チェコ共和国
- スロバキア
- ハンガリー
- クロアチア
- オーストリア
- リヒテンシュタイン公国
- イタリア
- ギリシャ
- マルタ共和国
- スイス連邦
- ルクセンブルク公国
- ベルギー王国
- オランダ王国
- フランス
- スペイン
- ポルトガル
シェンゲンビザについて
シェンゲン協定加盟国内に滞在する場合、シェンゲンビザ が必要になります。
シェンゲン協定の”加盟国間の出入国審査を簡略化することにより、ヒトの行き来を自由にする”ことを前提条件としたビザが発給されます。
つまり、ビザ が有効な限りにおいて、シェンゲンビザ を持つ渡航者はシェンゲンエリア内は国境審査が不要になり、国と国を自由に移動することが可能になります。
ただし、シェンゲンビザ は、その大き過ぎるメリットゆえに、膨大な提出書類の提出、またその内容に関する精査などのビザの発給審査がとても厳しいことでも有名です。
提出書類に不備がある・内容の整合性が取れない・過去に出入国拒否を受けたことがある・・・といった様々なケースがビザ発給の遅延・不承認へと繋がります。
また、このシェンゲンビザは、大きく分けてカテゴリーA、カテゴリーCと2つの種類に区分されていますが、申請者の国籍・申請目的などによって異なるカテゴリーのものが発給されます。
シェンゲンビザ のカテゴリー
カテゴリーA…Schengen Visa-Type A(Airport Transit Schengen Visa)
主にはトランジットのみを目的としたビザ。カテゴリーAではシェンゲンエリアで滞在することは認められない。
カテゴリーC…Schengen Visa-Type C
トランジット・90日以内の短期滞在が認められたビザ。このビザが発給されれば、連続した180日のうち累積90日間滞在することが可能。
カテゴリーCでは、出入国の回数もシングル(1回)/ダブル(2回)/マルチプル(数次、つまり有効期間中であれば何度でも)とそれぞれ種類が設けられており、こちらも滞在目的、申請者のステータスによって異なります。
また、日本やアメリカを含むビザ免除国に対しては、このカテゴリーCのルールが適応されます。
シェンゲンビザが免除されている国々
シェンゲン協定国と相互でビザ免除を認めている国々でシェンゲンビザ は免除されています。
アジア圏だと、日本をはじめ、香港、シンガポールなどの比較的経済的に豊かな国々が認められています。
その他、英語圏、スペイン語圏の国々で、シェンゲンビザ の取得が免除されています。
ビザ免除国は、以下の記事の”ETIASの取得が必要な国籍リスト”に記載していますので確認してみましょう。
シェンゲンビザが必要な国々
ビザ免除が認められている国以外の国籍保持者は、事前にシェンゲンビザ を取得しなければなりません。
中国やベトナムなどのアジア地域や、エジプト・カメルーンといったアフリカ諸国でシェンゲンビザ が必要です。
詳しくは以下の記事の”ETIASではなくシェンゲンビザが必要な国籍”に記載しています。
シェンゲンビザ申請の必要書類
シェンゲンビザと一口に言っても、加盟国は26ヶ国もありますので、それぞれの国で求められる必要書類を提出します。
※シェンゲン加盟国に1カ国のみ渡航する場合は、その国の大使館での申請になります。
2カ国以上シェンゲン加盟国に滞在する場合は、主な滞在国の大使館で申請書類の提出・ビザの申請になります。
2-5.主な滞在先がスイスの場合
シェンゲン協定加盟国の一つであるスイスが主な滞在国である場合は、スイス大使館でシェンゲンビザを取得する必要があります。
- 申請書
- ビザ用証明写真
- パスポート
- 在留カード
- 海外旅行保険の証明書
- 旅程表
- 予約確認表
- 在職・在学証明書
- 短期商用・ビジネスの場合
- 取引先企業からの招聘状・インビテーションレター
これらはスイス大使館でシェンゲンビザ を申請する際に必要な提出書類ですが、ドイツ・フランス大使館ではまた異なる書類の提出を求められるケースもあります。
また、一方で申請者の国籍、申請時期によって必要な書類が変わることもありますので、シェンゲンビザ を申請する際は事前に任意の大使館に確認を取っておくのがベストです。
シェンゲンビザの有効期限や滞在可能日数
一度ビザが発給されると、最大で3年間・マルチプルエントリーのシェンゲンビザ が発給されます。
通常のカテゴリーCであれば、連続180日間の中で累積90日滞在のルールが適応されるので、この条件下であればシェンゲンエリアでの滞在が可能です。
2国間同士のルール
通常、滞在可能日数に関しては上記の180日間の90日ルールが適応されますが、協定加盟国と申請者の国の2国間における条件があれば、そちらが優先される場合もあります。
日本とオーストリアの場合
例えば、日本とオーストリアの場合について見ていくと、日本はそもそもシェンゲンビザ が免除されている国の一つなので、カテゴリーCの”連続180日間の中で累積90日滞在可能のマルチプルエントリー”という条件が当てはまります。ところが日本・オーストリアの2国間においては、それぞれの国の渡航者に対して最大6ヶ月間滞在を許可するルールが存在します。この場合は、カテゴリーCの条件ではなく、日本・オーストリアの両方で合意されたものが優先されます。